About Book
写真家としてのそのキャリアを通して、市井の人々に真摯に向き合ってきた土佐和史の美しい光とともに捉えられた楽園の記憶。
写真家 土佐 和史。彼は写真の魅力を知っている。
フレーミングは横位置、構図、被写体は日の丸、そして全てカメラ目線。その抜けの良さに合わせフィルムはポジ。
あまりにシンプルでストレートなスタイルは決して弱くはなく、見る者をスッキリとさせてくれる。
東京在中で活動しているにも関わらず、地方(町、村、山)まで車を走らせ気に入った場所でキュッと車を止め撮影を開始する。
開始ではなく対話かもしれない。その地方に住む人々を見て、互いに気持ちが通い合うかのような被写体を選び、少しの会話をし、被写体は特に動かされる事もなく、そのまま静かにシャッターを切る。
一貫して美しく見えるものは光だ。その光は夕日が多い。
理由は単純で夕方に町の人々は海を見に行き、泥んこ遊び、恋人同士の会話、サーフィン、散歩、学校帰りの子供達、最も美しい時間。
だから写し出された写真は夕方が多い。照らされる光の美しさは、地方に住み暮らす人々への写真家土佐和史からの永遠の愛である。
『ちいさな幸せがそこにある。
忘れそうな喜びがそこにある。
それで充分じゃないですか。
そこにあるのは大きな生きる力です。
みんな生きている。
人も山も海も太陽の光を浴びて
みんな生きている。
彼らに会いたくて、土佐君は歩く。
どんなに歩いても疲れない旅はこれからも続く。』日本写真映像専門学校校長 濱口 栄
『まっすぐな瞳で見つめ合ってるやん♡』川島小鳥
Artist Statement
想えば、生まれ育った大阪にいた頃から地方への憧れがあった。それはまだ写真に出会っていない頃からだった。
時間が出来るたびに港町や山村に、特に目的もなくふらふらと出向いた。
非日常に身を置くことで、旅を感じ、自分だけの楽園を探しているのだった。
「写真に一番必要なもの、それは光です」恩師の言葉で僕の写真人生が始まった。
それからはカメラと共に、ひとたちや景色と向かい合うようになった。
仕事の為に上京してから、ここではない何処かへの想いはますます強くなっていった。
慌ただしい日常から離れ、少しだけ足を伸ばしたところに、全く違う時間が流れるその場所はあった。
地方に行くと新しい出会いや発見以上に、自分の過去の記憶を辿ることがある。
学校帰りの草の匂い、夕焼けになっていく部屋、祖母の手の感触。
温かくて切ないものが、からだを包み込む。
そう、あの頃のあの眩しい記憶たちが今の自分をつくっているのかもしれない。
Artist Information
土佐和史 | Kazufumi Tosa || オフィシャルサイト ||
1977年大阪府生まれ。
2003年Mio写真奨励賞 グランプリ受賞、2015年コニカミノルタフォトプレミオ受賞。
代表作に「和らぎの道で」「イロマチズム」等がある。
現在、東京都在住。全国各地に出向き、旅ゆく道で出会ったひとや風景を撮り続け作品発表を行っている。
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